【連載】VFX短編制作日誌 第1回

CG

前回、VFX短編制作の全体像をざっくり紹介しました。
今回はどうやって「絵コンテ」という形になったか、実際の作業の流れを追いながら書いていきます。

今回使ったツールは2つです。

  1. Claudeー絵コンテ用の資料を整理する
  2. ChatGPTー資料をもとに絵コンテそのものを生成する
  3. Claude(再登場) — 制作進捗トラッカーを作る

1.Claudeで絵コンテ用の資料を作る

いきなり画像生成AIに「絵コンテ描いて」と丸投げしても、たぶんいい結果は出ません。カメラワークも芝居も光の設計もバラバラになってしまうので、まずはClaudeとのチャットで、各カットに何を書くべきかのフォーマットを固めました。

最初にClaudeへ渡したのは、こんな箇条書きの構想メモです。まだ絵コンテ以前の、ただの流れ書きです。

  • 現実世界の私が、モニター①の前でゲームをプレイしている
  • 机の上のフィギュア(魔女)が、微動だにせずそのプレイ画面を見つめている
  • 魔女がゲームの世界に興味を抱く
  • 私に気づかれないよう、こっそり動き出す
  • 魔法で足場を作り、モニター①(ゲームの世界)へ飛び込む
  • ゲーム世界に入れたことに喜ぶ
  • (モニター①の中)ゲームのギミックで巨大な岩が転がってくる
  • 急いで逃げる
  • 押しつぶされる寸前、魔法で現実世界へ間一髪脱出
  • (現実世界)ホウキに乗って振り返ると、扉(モニター境界)がまだ開いており、岩の一部がはみ出してモニター①が破損・飛散する
  • 安堵するが、破損に気づいてハッとする
  • 般若の形相の私を見て、慌ててもう一台のモニター②へ逃げ込む
  • モニター②の中には、本編冒頭の映像を流しておき、視聴者に「過去に戻った」と錯覚させる
  • 逃げ込んだ先で、冒頭と全く同じ位置・同じポーズを取る(視聴者はループしたと錯覚する)
  • 安堵するが、私のプレイ画面が過去と違うことに違和感を覚える
  • ゲーム内の敵キャラが画面越しに攻撃してくる
  • 驚いて慌てふためき、ホウキで逃走
  • 魔法で扉を開き現実世界へ脱出。同時に敵の攻撃も画面を突き破って現実世界に飛び出してくる
  • (現実世界)机に着地し、惨状(破損した2台のモニター)を目の当たりにする
  • どうすればいいのかとあたふたする
  • 私が一枚の紙切れ(請求書)を魔女の足元に投げつける
  • 30万円の請求書だと気づき、絶望して崩れ落ちる

これをClaudeに渡して絵コンテ用の資料を作成してくださいと依頼しました。

詳細絵コンテ「モニター越しの異世界(仮)」
各カットは以下の情報で構成:
尺 / カメラ / 画角・構図 / 芝居・表情 / 光・雰囲気 / 音・SE / 次カットへの繋ぎ

Scene 1|導入(現実世界)
Cut 1(2.5秒):プレイ中の私

カメラ: 固定、ミドルショット
構図: 奥にモニター①でゲーム画面、手前に私の後ろ姿〜横顔。フレーム内、被写体は画面右2/3寄り
芝居: 淡々とプレイに集中している。特別な芝居は不要(この静けさが後の対比を生む)
光: 通常のデスク照明。以降の全カットの光基準になるため、色温度をここで固定
音: ゲームBGM+コントローラー操作音。環境音は控えめ
繋ぎ→Cut2: カットではなくそのままカメラ位置固定でフィギュアへパン、または固定のままフィギュアが画角に入るよう構図設計(実写1テイクで両方カバーできると効率的)

Cut 2(3.0秒):フィギュア魔女の静止

カメラ: 固定、ロングショット(縦セーフ外・引きの画)
構図: フィギュア魔女・私・モニター①が同一フレームに収まる。魔女は手前やや左、静止ポーズ
芝居: 微動だにしない。「モノ」であることを強調するため、まばたき・呼吸のような生体反応は一切なし
光: Cut1と同一
音: 無音に近い環境音のみ。ここで一度静けさを作ることで、次の「動き出す」の落差を強調
繋ぎ→Cut3: ゆっくりとしたプッシュインの終端で、魔女の指先がピクリと動く芝居を最後のコマに仕込むと自然にCut3へ繋がる


Scene 2|侵入(★ショート①候補)
Cut 3(2.0秒・縦セーフ):動き出す魔女


カメラ: バストアップ、被写体中央配置
構図: 魔女の顔・肩が画面の中央〜やや上に来るよう配置(縦トリミング時に頭が切れないよう頭上に十分な余白)
芝居: 私に気づかれないよう、目線だけをまず私の方にチラッと向けてから動き出す。動きは静かに、素早く
光: Cut1・2と同一(連続性の担保)
音: 衣擦れ・関節の軋みのような小さな効果音。無音の緊張感からの脱却
繋ぎ→Cut4: カメラは魔女の足元へティルトダウン、または別カットとして下からのアングルへ切り替え

Cut 4(1.5秒・縦セーフ):足場生成

カメラ: ローアングル、魔女の足元〜手元
構図: 魔法陣は画面下部中央に展開。縦トリミング時は魔法陣が上下に伸びる構図が有利
芝居: 手のジェスチャーで魔法陣を描く。小さな驚きや達成感の表情は不要(まだ静かに進める段階)
光: 魔法陣の発光が加わるため、ここから局所的に暖色/寒色のリムライトを追加(既存のglowing staff VFXの手法を流用)
音: 魔法発動の効果音(過去に使用したFirefly生成音源のトーンに寄せる)
繋ぎ→Cut5: 足場が完成した瞬間、魔女が一気にジャンプするアクションでカットを繋ぐ(モーションの勢いを途切れさせない)

Cut 5(2.5秒):モニター①へダイブ、喜び

カメラ: 望遠寄り、被写体を大きく捉える
構図: モニター①が画面中央、魔女が画面下から上に向かって吸い込まれるような動線
芝居: 恐怖よりも好奇心・高揚感を優先した表情。飛び込む瞬間は目を見開く
光: モニター画面からの発光が魔女の顔・体を照らす(画面光の反射を意識したライティング)
音: 吸い込まれるようなウィンドSE→ポータル通過音。ここでBGMをゲーム世界用のテーマに切り替えると効果的
繋ぎ→Cut6: 画面内(モニター①内部)へのシーンチェンジ。光の変化(現実の柔らかい光→ゲーム世界のコントラストの強い光)で世界が変わったことを示す


Scene 3|ゲーム世界のトラブル(★ショート②前半)
Cut 6(2.0秒):岩ギミック発動


カメラ: 俯瞰のワイド→魔女の顔アップへ素早くカット
構図: 前半は岩の巨大さを見せる引きの画、後半は驚愕の表情のみのアップ
芝居: 喜びから一転、恐怖の表情。目の開き方・口の開き方を大きく
光: ゲーム世界のダイナミックな光(岩の砂埃・振動によるちらつきを加えると迫力が出る)
音: 岩が転がる轟音(低音を強調)、SE的な効果音よりも「地響き」に近い質感が良い
繋ぎ→Cut7: 岩が画面奥から迫るタイミングで魔女が反転して走り出す動作をそのまま繋げる

Cut 7(2.0秒):逃走

カメラ: 被写体を画面内に留めるトラッキング/パン
構図: 魔女中央、背景が流れる。縦セーフを意識する場合はここが最重要(被写体が左右に大きくブレないこと)
芝居: 全力疾走。表情は恐怖よりも「必死さ」を出す(歯を食いしばる等)
光: Cut6と統一
音: 足音、荒い息遣い、背後の岩の音が徐々に大きくなる(緊張感の演出)
繋ぎ→Cut8: 岩が画面にほぼ追いつく瞬間でカット、間一髪感を出す

Cut 8(2.0秒):間一髪脱出

カメラ: ローアングルから始まりズームアウト
構図: 岩が画面奥から迫る中、魔女が扉(モニター境界)へ飛び込む
芝居: 最後の瞬間、振り返って岩を見る一瞬の間を作ると緊張感が増す
光: 扉部分(現実世界への境界)だけ現実世界の柔らかい光が漏れているのが視覚的に分かりやすい
音: 岩の衝突音一歩手前で急停止するようなSE処理、ポータル通過音
繋ぎ→Cut9: 現実世界へシーンチェンジ。光のトーンが再び現実の柔らかい光に戻る


Scene 4|一つ目の惨状(★ショート②後半)
Cut 9(2.5秒・実写プレート):振り返り、破損発覚


カメラ: 固定〜微妙なパン、引き気味
構図: モニター①と机全体が画角に入る。破損表現のため三脚固定を推奨(合成トラッキングの負荷軽減)
芝居: 魔女はホウキに乗り振り返る動作のみ(CG側)
光: 破損の瞬間、モニター内部の光が一瞬強く漏れる演出を加えると視覚的インパクトが出る
音: ガラスが割れる音、岩がモニターにぶつかる衝突音(低音+高音のガラス片の音を分けてミックス)
繋ぎ→Cut10: 破損に気づく魔女の表情へカット。時間差(気づくまでのタメ)を意図的に作る

Cut 10(2.0秒・縦セーフ):安堵からハッとする

カメラ: 正面固定の表情アップ
構図: 顔全体が画面中央
芝居: 安堵の表情→数フレームの間→破損に気づきハッとする。この「間」がコメディのリズムを作る
光: Cut9と統一
音: 無音に近い状態からの効果音の入り(気づいた瞬間に小さなSEを入れると芝居が締まる)
繋ぎ→Cut11: 恐る恐る振り返る動作でカメラを私側へパン、または別カットで繋ぐ

Cut 11(2.0秒):般若の私を見て逃走

カメラ: 私は寄り、魔女は逃げの芝居
構図: 般若の形相の私が画面手前に大きく、魔女は背景で小さく逃げ出す
芝居: 私の表情は静止画のようにあえて動かさない静的な「圧」を出す。魔女は対照的に慌ただしく動く
光: 私の顔に強めのコントラスト(般若の表情を際立たせるため、やや下からの光や硬い光質も検討)
音: 音楽を一旦止める、または低い持続音(ドローン)を入れて緊張感を出す
繋ぎ→Cut12: 魔女がモニター②へ向かって走り出すのを追うカメラワークでそのまま繋げる


Scene 5|偽ループ
Cut 12(2.0秒):モニター②へ逃避


カメラ: Cut5と近い画作り(反復であることを視覚的に示す)
構図: モニター②中央、魔女が吸い込まれるように逃げ込む
芝居: Cut5の「喜び」とは対照的に「逃げ込む必死さ」の芝居
光: モニター②の発光。Cut5と質感は似せつつ、色味を若干変えても良い(①と②の違いを示す手がかりになる)
音: ポータル通過音(Cut5と同系統の音でループ感を補強)
繋ぎ→Cut13: モニター②内部へのシーンチェンジ

Cut 13(3.0秒・Cut2と完全一致構図):冒頭と同ポーズ(偽ループ)

カメラ: Cut2と三脚位置・高さ・焦点距離を完全一致させる
構図: Cut2と寸分違わぬ構図。魔女のポーズも同一
芝居: Cut2と全く同じ静止ポーズ。視聴者に「ループした」と錯覚させる最重要カット
光: Cut2と可能な限り同一の光条件(この一致がループ錯覚の説得力を左右する)
音: Cut2冒頭と同じ環境音を短く重ねると、より強くループを示唆できる
繋ぎ→Cut14: 魔女が安堵する微細な芝居(頬が緩む程度)から違和感の芝居へ

Cut 14(1.5秒):違和感

カメラ: 表情アップ
構図: Cut10と近い画角だが、感情の質は異なる(安堵ではなく違和感)
芝居: 目線がわずかに泳ぐ、首を傾げる程度の小さな芝居
光: Cut13と統一
音: 微妙な違和感を示す効果音(デジタルグリッチ的な小さいノイズ音も候補)
繋ぎ→Cut15: 目線の先(モニターのプレイ画面)にカメラが切り替わり、敵の攻撃が来る


Scene 6|二つ目の惨状
Cut 15(2.0秒):敵の攻撃


カメラ: 魔女越しのオーバーショルダー
構図: 手前に魔女の肩越し、奥のモニター②から敵の攻撃が飛んでくる
芝居: 攻撃に気づいて驚く表情への切り替わり
光: 攻撃エフェクトの発光が魔女の顔を照らす
音: 敵の攻撃音(金属音や魔法音など、ゲーム側の雰囲気に寄せつつオリジナル音源で)
繋ぎ→Cut16: 驚いた直後、即座にホウキに飛び乗る動作へ

Cut 16(2.0秒):逃走・扉を開く

カメラ: 魔女を追うパン
構図: 逃走とポータル展開が同フレーム内で進行
芝居: Cut7よりもさらに切迫した動き(今回は「戻れない」焦りがある)
光: Cut15と統一
音: ホウキの風切り音、ポータル展開音
繋ぎ→Cut17: ポータルを抜ける瞬間、攻撃も同時に追いついてくる構図へ

Cut 17(2.5秒):脱出+攻撃貫通

カメラ: Cut8と対になる画(同じ手法の反復を視覚的に示す)
構図: 境界線(現実⇄ゲーム)を挟んで、魔女と攻撃エフェクトが両方とも通過する
芝居: 魔女は必死の形相のまま現実へ飛び出す
光: 境界を境に光のトーンが切り替わる(Cut8と同じ手法)
音: ポータル通過音+攻撃エフェクトが現実世界の音響空間に切り替わる瞬間の音の質感の変化(リバーブ処理などで「別の空間から来た音」を表現)
繋ぎ→Cut18: 現実世界、机の上への着地


Scene 7|オチ(★ショート③候補)
Cut 18(2.5秒・実写プレート):惨状を見て呆然

カメラ: 引きの画、机全体
構図: 左にモニター①(岩の一部+破損)、右にモニター②(攻撃跡)、中央に魔女
芝居: 着地後、呆然と辺りを見回す
光: 両モニターの異常な発光が机上を照らす演出(惨状の視覚的説得力を上げる)
音: 環境音のみ、あえて静かにすることで次のギャグへの「溜め」を作る
繋ぎ→Cut19: あたふたする芝居へ

Cut 19(2.0秒・縦セーフ):あたふた

カメラ: バストアップ
構図: 魔女中央
芝居: 視線が定まらず、手だけが意味もなく動く「どうしよう」の芝居。ここはコミカルに大きめの動きでOK
光: Cut18と統一
音: コミカルな効果音(軽いパーカッション的な音)を加えると笑いのリズムが出る
繋ぎ→Cut20: 私の手が画面外から入ってくる

Cut 20(1.5秒):請求書を投げる

カメラ: 手元インサート→紙の軌道→魔女の足元
構図: 私の手(実写)が紙を投げる瞬間をクローズアップで挟む
芝居: 私は無言、無表情(怒りは既にCut11で見せているのでここは淡々と)
光: Cut18・19と統一
音: 紙が飛ぶ音、着地音。ここも「間」を意識し、音数を絞る
繋ぎ→Cut21: 紙を拾う→崩れ落ちる、へ

Cut 21(2.5秒・縦セーフ):崩れ落ちる

カメラ: 正面固定
構図: 魔女中央、崩れ落ちる過程を正面から
芝居: 魂が抜けるような脱力。動きはゆっくりめにすると絶望感が増す
光: Cut18〜20と統一
音: 崩れ落ちる音(軽い衣擦れ、床に伏す音)
繋ぎ→Cut22: 暗転

Cut 22(2.5秒・合成):YOU DIED演出

カメラ: 画面全体を使う合成カット
構図: 暗転後、「YOU DIED」風テキストが魔女に重なって表示
芝居: 芝居なし(Cut21の崩れ落ちたポーズのまま)
光: 暗転からテキストの発光のみのミニマルな画
音: エルデンリング風の重厚な効果音(オリジナル音源で再現)。ここで音楽・SEともにフェードアウトしてエンド
備考: 9:16版(ショート③)ではテキストサイズ・位置を作り直すため、16:9のまま流用しない


全体を通しての演出メモ

静と動の緩急: Cut2(静止)→Cut3-8(動)→Cut9-11(静→動)→Cut12-14(静)→Cut15-17(動)→Cut18-21(静→脱力)という緩急のリズムがすでに構成に内在している。各カットの「間」の長さを編集時に意識すると、テンポの良し悪しが大きく変わる
光のルール: 現実世界=柔らかい光、ゲーム世界=コントラストの強い光、境界=発光、というルールを一貫させることで、カット間の世界の切り替わりが説明なしで伝わる
音の設計: Cut11とCut18の「静けさ」が、笑いのオチ(Cut20-22)を効かせるための重要な「溜め」になる。ここで音数を削ることを恐れない

ChatGPTで絵コンテを生成する

資料が固まったところで、ChatGPTに絵コンテ生成を依頼しました

一回では思った通りの絵コンテが出てこなかったので、間違っている箇所を指摘→修正を繰り返しました。
んーー??っていうところも多々ありますが、概ねこんな感じかなと言う感じなので、これでいきます。

Claudeで制作進捗トラッカーを作る

絵コンテが22カット分できると、当然「今どこまで進んだか」を管理したくなります。ExcelでもNotionでも良かったんですが、今回はClaudeにお願いして、シンプルなHTMLの進捗トラッカーを作ってもらいました。

やってることは単純で、22カット×3工程(CG/合成/グレーディング)=66マスを、タップするたびに「未着手→進行中→完了」と状態が切り替わるだけのものです。全体の完了数と、シーンごとの進捗バーが一目でわかるようになっています。

Claudeが作成した制作進捗トラッカー

地味な機能ですが、これがあるだけで「今日はここまで進んだ」という手応えが可視化されて、モチベーションの維持にかなり効いています。この連載でも、更新のたびにトラッカーの状態を貼っていこうと思います。

次回予告

次はいよいよ実制作に入ります。まずはScene 1・2、魔女が動き出すところからのCG制作の話を書く予定です。

それでは、また次の更新で。