高倍率マクロで深度合成(フォーカススタッキング)をしていると、必ずと言っていいほど出くわすのが合成アーティファクトです。
今回は八角(スターアニス)を LAOWA Aksen 45mm f/2.8 1-5x で撮影した際に発生した実例をもとに、Affinity内だけで完結する修正方法をまとめました。
撮り直しはとにかく手間がかかるので、同じ悩みを抱えている方の参考になれば嬉しいです。
今回発生したアーティファクト
下の写真は八角の先端を5倍前後・f/11・34枚スタックで合成した結果です。

画像上川、背景の玉ボケ部分に不自然なアーティファクトが発生しています。

撮影時にレンズについていた塵かホコリか何かでしょうか?
黒い粒が映り込んでいたのが、合成後に複製され粒の塊になってしまいました。
原因
今回のケース
今回使用したLAOWA Aksen 45mm f/2.8 1-5xは、内部フォーカス機構を持たず、カメラごと前後に移動することでピントを合わせるレンズです。
また、ピント合わせはマクロレール(Leofoto MP200S)を用いて前後に移動させて行いました。
そのため今回のアーティファクトは、次の2つが原因と考えられます。
- レールの前後移動による画角(倍率)変化
- レール操作時の微振動: ノブを回す・クランプを締め直すといった操作のたびに、レールや雲台の接続部にわずかなガタ・たわみが生じ、フレームごとに被写体の位置がサブピクセル単位でズレることがあります
この2つによってフレーム間の位置ズレが生じ、合成アルゴリズムの特徴点マッチングがうまくいかずにノイズとして出てしまったと考えています。
一般的に起こりうる原因
レールではなく、レンズ側の内部フォーカス機構でピント位置を変えて深度合成を行っている場合は、以下のような原因も考えられます。
- フォーカスブリージング: 内部フォーカス方式のレンズでピント位置を変えると、実効焦点距離もわずかに変わり画角がズレる現象
- ホワイトバランス/自動露出のコマごとのブレ: AWBや自動露出が有効だと、ピント位置が変わるたびに測光結果がわずかに変わる
- オーバーラップ不足: 隣接フレーム間でピントの合った範囲の重なりが少ないと、合成アルゴリズムが正しく繋げられない
Affinityでの直し方: ソースクローニング
Affinityのフォーカス結合(Focus Merge)には、合成後にそのまま元素材を使って部分修正できる「ソースクローニング」という機能があります。
手順は次の通り。
- 「ファイル」→「新規フォーカス結合」でスタックを合成する
- 合成が終わると、結果確認画面に元画像のサムネイル一覧(ソースパネル)が表示される。レタッチ(コピー)ブラシは自動的に選択された状態になっている
- アーティファクトの箇所について、ソースパネルの目玉アイコンでプレビューを切り替えながら「これが一番きれい」という1枚を選ぶ
- ブラシ設定は「マスキング(ソフト)」タイプ・硬さ0%を目安にして、選んだ元画像の上をなぞるように塗る。塗った部分だけ最終結果にコピーされる
- 気に入らなければCtrl+Z(Mac: Cmd+Z)でいつでもやり直せる。複数箇所を別々のソースから塗り分けても問題ない
- 修正が終わったら完了ボタンで通常の編集画面に戻り、現像・書き出しへ進む

塗っている最中に気づいた、もう一つの問題
修正している途中、実は背景のボケ部分にも別の問題があることに気づきました。合成した直後の見た目では気づかなかったのですが、アーティファクト箇所だけをピンポイントで塗ると、隣接する部分との間で色味の差がかえって目立ってしまったのです。


原因は、フレームごとに背景ボケの明るさや色味がわずかに違う状態のまま、合成アルゴリズムが重ね合わせてしまったことだと考えられます。
要因としては、
- オートホワイトバランス/自動露出によるコマごとの微妙な色温度・明るさのブレ
- レールの前後移動に伴う、周辺減光(ビネット)の出方の変化
の2つです。
背景はどのみちボケていると割り切り、背景という「面」全体を1つのフレームだけで統一して塗る方が、色の継ぎ目が生まれず自然に見えます。
部分ごとにソースを切り替えるのではなく、
- 背景の色・明るさが一番自然に見えるフレームを1枚選ぶ
- そのフレームで背景全体をまとめて塗り直す
- それでも気になる色ムラが残る場合は、背景だけ選択範囲を作って軽い調整レイヤー(カーブやHSL)で均一化する
という流れがおすすめです。
再発防止のために
根本的な予防策としては、
- ホワイトバランスをAWBではなく固定にする
- 露出(SS/F値/ISO)を固定にする
- ピントの送りステップを細かくして、フレーム間の変化量を減らす
あたりが効果的です。特にAWB/自動露出はコマ間の色ブレの主犯になりやすいので、深度合成前提の撮影では真っ先に見直したいポイントでした。
レール由来の画角ズレ・振動については、
- レールを送った後、数秒の待機時間を置いてから撮影する(たわみが落ち着くのを待つ)
- クランプ類は毎回同じ強さでしっかり締める
- レリーズやセルフタイマー/リモートシャッターを使い、シャッターボタンを直接押さない
- 三脚・雲台側の接続にもガタがないか事前にチェックする
といった運用面の対策が有効です。
まとめ
高倍率マクロのフォーカススタッキングでは、位置ズレ、色ムラが起きないよう最大限注意しながら撮影を行い、アーティファクトが発生したら「部分的」or「面」単位で元画像に塗り替えることで修正します。
撮り直しの手間をかけずに、Affinity内だけでかなりのところまで追い込めるので、同じような症状で悩んでいる方はぜひ試してみてください。

